紙の文化びと

あしざわまさひとさん

▶︎アトリエパセリinsta

おさんぼできるシカとあしざわさん

幼少期と紙

富士市は、紙のまち。小さなころからものを作ることが好きでした。友人の親御さんや近所のおじさんで紙関連の仕事をしている人がとても多く、まわりに紙が沢山ありました。和紙から長い紙の筒など「廃材」をよくもらうことがありました。紙の筒ではチャンバラをしたり、藁半紙に絵を描いたり、子どもの頃から紙でいろいろなものを作りました。広告の裏に絵を描いたり、紙飛行機や剣を作って遊びました。紙管は望遠鏡にしたり、段ボールは秘密基地にしたりしました。ノートを買うよりも、もらってきた紙で遊ぶことが多かったのだと思います。買わなくても創作できる喜びと、工夫すれば形になる手応えを、日常のなかで体で覚えました。今でも作品の素材として紙を使うことが多いです。

あしざわさんの作品

みる人もつくる人も、作品と人とのコミュニケーションがある作品を作っています。代表作は、街中を歩かせる「おさんぽできる彫刻」シリーズ。お店の前に番犬を紙で作ったときに、お散歩もできるようにしたのが始まりです。トリケラトプスやアンモナイトなど“ふだんはお散歩できない生き物”まで、お散歩できる作品にして作品から街へ繰り出そうと制作しています。

おさんぼできる彫刻シリーズ

また、かぶって撮影できる動物のマスクや、写真に撮ることで完成する鳥獣戯画、季節の移ろいを拡大する巨大な桜葉のインスタレーションなど、見る人が触れ、動かし、撮影して“完成”する体験型の作品も手がけています。あしざわさんの作品

北里アリーナ富士」での桜の葉インスタレーション
動物のマスクをかぶると思わずポーズを作ってしまう

例えば、動物のマスクをかぶると、普段とは違うおかしなポーズで写真を撮ったり、作品に触れた人がそこから物語を生み出している瞬間を垣間見るのが好きです。

素材として紙を選ぶ理由

紙は軽く、切る・貼る・曲げる・積層するなど加工がしやすく、安く手に入ることも魅力です。木枠で骨格を組み、新聞紙で肉付け、和紙で表情を仕上げると強度と温かみが両立します。段ボールは骨格や量感を作ったり、猿の頭で使いました。ティッシュは毛並みの柔らかい質感の表現に最適、羊を作るときに使いました。表面のしわ、波、繊維の出方が生き物らしさを引き出すのに、紙はピッタリだと思います。紙は質感もありとあらゆるものがあるのでモチーフにあった紙を選ぶのも楽しみです。

干支シリーズの猿。目玉はビー玉です
ダンボールの質感が毛並みにピッタリ
羊は柔らかい質感の紙をつかう

アトリエパセリ

子ども向け絵画・造形教室を25年以上続けています。これまで「子どもの国」で毎月ワークショップを開催したり、「北里アリーナ富士」では巨大な桜の葉をエントランスに飾ったり、子どもたちと一緒に作った葉っぱを展示したりしてきました。手を動かす楽しさを育てるために、地域の展示と連動させ、子どもたちの作品も並ぶ“参加型”の場を各地で開いています。最新の開催情報や募集は「アトリエパセリ/あしざわまさひと」のInstagramで発信中。見学・体験や出張ワークショップの相談も歓迎しています。街のあちこちに、触れて遊べるアートを広げていきます。

アトリエパセリの工作室

子どもたちに伝えたい事

つくるって楽しいことなんです!人の評価を少し気にすることはあるかもしれません。けれど、基本は「自分が作りたいものを目の前で完成させたら満足!」。その気持ちがベースにあれば、どんどん作り続けていけると思います。普段からノートをあちこちに置き、アイデアをためているのも制作の楽しみのひとつです。何もない机に新聞紙を一枚置き、丸め、貼り、色を重ねていくと「なかったもの」が生まれる――その0から1が生まれる瞬間の喜びを忘れないでほしい。
上手い・下手よりも、まず手を動かす勇気。失敗して笑い、やり直して工夫する。その過程こそが創造の核です。身近な紙は、最良の相棒。いろんな紙に触れて、思いついたアイデアをぜひ形にしてみてください。

作るって楽しい!ムンクの叫びと!

あしざわ まさひと

あしざわ まさひとさん

造形作家・「アトリエパセリ」主宰

富士市生まれの造形作家・「アトリエパセリ」を主宰。代表作は「お散歩できる彫刻」シリーズ。実際に街中を散歩させるユーモラスな作品。また、動物マスクや巨大な桜の葉など、鑑賞者が触れたり写真を撮ったりして初めて“完成”する体験型作品も数多く手がけている。アトリエパセリでは25年以上にわたり絵画・造形を指導。常識から半歩踏み出した発想と「作りたい!」という純粋な衝動を原動力に、街にアートを散りばめ、誰もが自由に参加できる場を広げています。

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